ヘルニアという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、どんな病気でどのような症状が出るかはご存じない方が多いかもしれません。本記事では、代表的な腰椎椎間板ヘルニアについて説明いたします。
ヘルニアってなんだ?
ヘルニア(hernia)とは
ヘルニア(hernia)とは、内臓などが本来あるべき場所から「脱出・突出」した状態の事を指します。例えば、脳ヘルニアは脳腫瘍などの病変により脳実質が偏移した状態を示します。また、椎間板ヘルニアは椎間板の組織が外へ飛び出した状態を指します。腹部内蔵などでは、鼠径ヘルニアが有名で鼠径部(足の付け根 股の部分)が加齢によって弱くなりそこから消化管組織が飛び出てしまう状態です。
腰椎椎間板ヘルニアについて
人間の背骨は、脊椎という骨とその脊椎同士の間を埋めるクッションの役割をする椎間板という組織、そして脊椎後方を通る脊髄神経で構成されています。
この椎間板が何らかのストレスにより圧迫され、中身が飛び出た状態を椎間板ヘルニアと言います。この状態が腰椎に現れると腰椎椎間板ヘルニアということになります。
お饅頭が入れ物の中で何らかの衝撃でつぶれてしまったときなどに中身が飛び出した状態が近いイメージになります。
左は腰椎を縦方向で切って横から見たMRI画像です。下から3か所ほど黒い色で脊髄神経を圧迫して飛び出ているのが分かります。
腰椎椎間板ヘルニアの原因
腰椎椎間板ヘルニアになりやすい因子を下記に示します。
- 加齢
- 不良姿勢
- 重い物を持つなどの労作
- 男性
- 遺伝
- 喫煙
加齢によって椎間板の変性が起こり、髄核を取り巻く繊維輪に亀裂などが入ります。ここで姿勢や労作によって椎間板に圧力が加わると髄核が飛び出て後方にある神経を圧迫して症状が発生します。姿勢としては中腰姿勢や前屈姿勢、労作としては重たい物を持つなどが挙げられます。また近年は研究により遺伝的な因子も影響している事が分かってきたようです。喫煙も関係しており、非喫煙者に比べ喫煙者の方が1.27倍高いと言われています。
腰椎椎間板ヘルニアの好発部位とタイプ
好発部位
①第4腰椎と第5腰椎の間
②第5腰椎と仙骨の間
に発生する割合が高いです。
ヘルニアのタイプ
①ヘルニアの出方によるタイプ分け
膨隆型:髄核が繊維輪を押して後方へ膨らんでいる
脱出型:髄核が繊維輪を破り後縦靭帯に達している
穿破突出型:髄核が繊維輪と後縦靭帯を破り突出している
遊離脱出型:飛び出した髄核が分離している
このうち、穿破突出型や遊離脱出型は体内の免疫作用により自然と小さくなり2-3か月で症状が消失することもあります。
②ヘルニアの出る方向によるタイプ分け
正中型:まっすぐ背中側に向かって出るタイプ。脊柱管内に突出して、背中の痛みや両側の下肢にしびれや知覚障害が出ます。
傍正中型:正中型よりわずかに左右どちらかに出るタイプでこれも脊柱管内に突出します。左右に寄っているため片側の下肢に痛みやしびれが出やすくなります。
外側型:左右どちらかに突出して脊柱管の外に突出します。症状は左右どちらかの下肢に痛みや知覚障害、筋力低下が出現します。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
①痛みや張り感
腰部に痛みや張り感が出てきます
②しびれや知覚障害
お尻~大腿の外側~下腿の外側にかけてしびれが出ます。症状が強くなると感覚が鈍くなります。第4-第5間のヘルニアではL5神経根が圧迫され足の甲に知覚障害が出現します。第5ー仙骨間のヘルニアではS1神経根が圧迫され、足の小指や足底に知覚障害が出現します。
③筋力低下
第4ー第5間のヘルニアでL5神経根が圧迫を受けると、足指や足首を挙げる筋肉が働きにくくなり、踵歩きが出来なくなります。つま先を挙げにくくなるため、歩行時に躓きやすくなります。
第5ー仙骨間のヘルニアでS1神経根が圧迫を受けると、アキレス腱の筋力低下が起こり、足首を下げる力が働きにくくなります。そのため歩行時につま先の踏ん張りが効かなくなります。
④膀胱直腸障害
ヘルニアが正中型で真直ぐ後方に突出した場合や巨大ヘルニアの場合、馬尾神経を圧迫して膀胱直腸障害が生じることがあります。例えば、頻尿や残尿感、失禁などが出ます。
腰椎椎間板ヘルニアの治療
①保存療法
- 安静
- 痛み止め内服
- 神経ブロック
症状が軽い場合などは保存療法として、安静や痛み止めの内服、症状が強くなれば神経ブロックなどが行われます
②手術療法
症状が強くなったり、膀胱直腸障害などが出ると手術療法の適応となります。
③リハビリテーション
上記保存治療や手術治療に合わせてリハビリテーションを行います。運動療法にてストレッチや筋力トレーニング、装具療法により再発予防をしたり、物理療法を用いて痛みの緩和を図ります。
コメント