四十肩・五十肩について前回の記事で記載しました。今回は四十肩・五十肩で動かなくなってしまった肩関節を少しでも早期に回復させるためのセルフトレーニング方法を説明します。
四十肩・五十肩については下記から前回の記事をご参照ください
※この記事はごく一般的な運動療法について記載しています。実際は皆さんの症状や回復時期に見合った運動療法が適切となります。そのため、整形外科に通院しており、リハビリをしている方はそこのセラピストに教えてもらうのが良いでしょう。
前回の記事で、四十肩・五十肩には回復過程(炎症期・凍結期・回復期)があると説明しました。各時期に分けて運動療法を提案します。
炎症期
炎症期は発症から数日~数週間にかけ強い痛みを伴う時期となります。そのため、まず第1に行う事は安静と沈痛となります。そのうえで、痛みが生じない程度の範囲で回りが硬くならないように肩甲骨を動かしていきます。
寝る時の姿勢の工夫
肩関節の向きや位置が腕の重さにより強制され、痛みが生じやすくなります。人によっては夜間痛により眠れなくなる場合があります。また、痛みのため肩関節の筋肉が過剰収縮して腕が体幹に密着した状態が長くなると、そのまま肩関節が拘縮(固まる)しやすくなるため、下記の様な予防が必要です。
仰向けで寝る時
痛めている肘の下にバスタオルを丸めて入れて肘が下がらないようにしましょう。
また、腕の下にもタオルを入れると体幹と腕の間に空間が生まれてリラックスできます。
横向き寝の時
痛みのある肩を上側にして眠ります。腕と体幹の間にタオルや枕を挟んで空間を作ります。
上記どちらに関しても、一番痛みが軽減しリラックスできる様に調節しましょう。
運動1 肩甲骨挙上Ex,外転内転Ex
肩に痛みがあると、肩甲骨や肘関節、手関節などそのほかの部分も動きにくくなります。この時期は肩関節自体は痛みが強いため、肩甲骨などそのほかの部分まで硬くならないように動かしましょう。
①両肩をすぼめる(左図右上)
②肩甲骨を寄せます(左図左下)
③肩甲骨を離します(左図右下)
運動2 振り子運動(コッドマン体操)
①片手をテーブルについてお辞儀の姿勢を取り、痛い側の手を真下に下ろします。
②体を前後左右に揺らしましょう。この運動により手が自然と前後左右に揺れていきます。
③同じように体を回すように揺らして腕が自然とぐるぐると円を描くように揺れます。
ポイント:肩の力で動かすのではなく体を揺らして遠心力をつかって腕が動きます。なるべく肩の力を抜いて行いましょう。
100均で売っている100g程度の重りを手首に付けると重さで肩関節に緩みが出て効果的です。
凍結期
炎症期の痛みが治まってくると周りの組織が拘縮して、肩自体が動きにくくなってしまいます。痛みは少しずつ治まってきているので痛みが強くならない様にしながら肩関節の運動を進めます。
運動3 肩関節外旋・内旋運動
可動域拡大の練習
杖などの棒を用いると運動が行いやすくなります。
①両肘を脇につけて90度に曲げましょう。
②両手で杖などの棒を持ちます。
③痛みのない手(左の写真では左手)の力を利用して外側や内側に右手を動かします。
インナーマッスルを鍛える練習
肩のインナーマッスルをトレーニングする方法です。インナーマッスルがきちんと働く事で肩関節内の運動が正常に動くようにしていきます。
その1 輪ゴムを利用
①両方の腕を体側につけて肘を90度に曲げましょう。
②指先で輪ゴムを持ちます。
③5~10㎝程度左右に引っ張ります。
可能なら痛い側の手だけでやってみましょう。
その2 ゴムチューブを利用
輪ゴムよりも強度が高くなりますので、輪ゴムが痛みなく楽にできる場合に行います。
よく使われるセラバンドチューブでは一番弱い白や黄色がおすすめです。
運動4 肩関節屈曲練習
肩関節を前方に挙げていく練習です。90度以上挙上すると痛みが出やすいので、痛みが少ない範囲で行いましょう
タオルワイパー練習
①テーブルにタオルを置いて両手を載せます。
②体を前方に倒しながら両手を前方に伸ばしていきましょう。
③続いてテーブルの左右端に向かってタオルを動かしましょう。
※ポイント 痛みの無い手の力を利用して補助しながら行いましょう。なるべく脇が広がる感じを感じながら行えると良いでしょう。
回復期
痛みがさらに軽減してきたら積極的に肩を動かす必要があります。
先ほど、凍結期で行った体操は引き続き行いながら、さらに運動範囲を広げてください。
運動5 肩関節挙上練習
棒を用いた練習1
両手で杖などの棒を持ち上方へ挙上します。
痛みのある肩は挙げにくいですので少しずつ行います。
両手の間隔はまっすぐ前で持つか少し広げて持つなどしていろいろな間隔で行います。
※注意点は体が横に倒れないようにまっすぐの姿勢をキープしてください。
棒を用いた練習2
側方へ挙げていきます。
①まず水平から30度程度前方に向けて挙げていきます。痛みのない手で補助して持ち挙げてあげましょう
可能なら上で少しキープしてストレッチします。
②次に真横に向かって挙げていきます。
※注意点:この時も体が横に倒れない様まっすぐをキープします。
肩の力のみでの練習
次に棒などを用いず行います。某などを用いないと肩の筋力のみを用いて行う事となり、棒を用いるのとは運動が異なります。
最初は肘を曲げた状態から行った方が肩の筋肉に無理をかけずに行えます。
①まず、水平から30度程度前方に向かって挙上します(上の写真)
②次にまっすぐ前方から挙上します(下の写真)
③最後に真横から挙上します。
運動6 結帯動作
背中に手を回す動作です。
この運動も五十肩ではかなりやりにくくなる運動です。
①腰に手を当ててみましょう。可能なら少しこの姿勢をキープします。
この時体が前や横に倒れないようにまっすぐの姿勢を維持しましょう。
②楽にできるようになったら、少しずつ背中に手を回していきましょう。
その他 グッズの紹介
①サポーター
炎症期~回復期に痛みを軽減したり、肩を保護する目的グッズとしてサポーターなどがあります。それほど高くないものが多いので、あると肩以外の部分も緊張緩和が出来ます。
②運動に使えるグッズ
よくスポーツやリハビリでチューブトレーニングとして使用されるゴムチューブです。肩の運動では弱めの白や黄色がおすすめです。
おわりに
四十肩・五十肩のセルフトレーニングとして、各時期に応じた運動を6種類紹介しました。最初にも記載しましたが、整形外科に行かれていない方はまず受診をお勧めします。さらにリハビリをしている方はそこのセラピストに自主トレーニング方法を教えてもらう事をお勧めします。
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